full of love~わが君の声、君の影~

彼女は立ちあがるとつかつかと歩きだす
後を追う
「咲ちゃん!荷物!」
彼女はピタッと止まるとこちらを振り向いた

俺はすぐに追いついて彼女にバックを渡し
「俺のジャケット返してくれる?」
彼女はハッとして自分の肩にかかっているものをはぎとり俺の前に突き出した
「ありがと」
俺は受け取り、かわりの彼女の薄手のコートを肩にかけてあげようとすると
「自分でできます」
と制された

タクシーに一緒に乗ろうとする俺に
「大丈夫です。1人で帰れますから。運転手さん行ってください」
「でも・・」
と言い返す間もなくドアは閉まりタクシーは走り去った

家で1人で泣いている彼女が脳裏に浮かぶ
胸が痛む

< 287 / 308 >

この作品をシェア

pagetop