full of love~わが君の声、君の影~

できるだけ優しく、それでも俺ははっきりと残酷なことを言う
「俺も咲ちゃんのこと好きだよ・・でもそれは大事な・・妹だからだよ」
彼女が身を硬くする

俺は彼女の肩をつかみ自分から離すと
また泣き出しそうな彼女の顔を見ながら言った
「君にはもっとふさわしい奴が現れるよ・・俺なんかよりずっと君を大切にしてくれる男がさ」


都合のいい男の常套句だ
でもこれは本心だった
彼女は俺にはキレイすぎるんだ

彼女に会うと自分はひどく汚れていてゆがんでみえる
今まで築き上げてきたもの、信じてきたものでさえ間違っていたのではないかとおびえる
彼女の瞳は全てを見透かしているようでこわい

じゃあ何でキスしたんだ?


「じゃあ何でキスしたんですか!?」
「君に頼まれたからだよ」
「頼まれれば誰でもするんですか!」
「かわいい娘(こ)ならね」
バシッ
彼女の平手打ちを受ける

(そうだよ俺はそういう男だよ)

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