ブランコ。
リエは震えつづけている。

このままでは、リエの震えが僕にも伝播して、自分も震えだしてしまうような気がした。

僕だって怖い。

僕はリエの手に自分の手を重ねる。

大丈夫、大丈夫、というように、子供を寝かしつけるようなリズムでリエの手を叩く。



リエに懐中電灯を取るように指示する。

僕の背中すれすれに立っているリエが、懐中電灯を取るためには右に体を曲げながら、若干、前にもかがまなければならない。

僕の背中にはリエのボリュームが押し付けられる。

カッターシャツとブラウスの、同じ様な素材が擦りあう『シュッ』という音が微かにする。

こういう場面でなければ、しばらく堪能しておきたいところだが、今はそんなことを言ってられない。
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