黒色女子を個人授業
自嘲する彩香に、私は小さく頷いた。

「本命を貫き通すことだけが大事だなんて思わないわ。
遠くの一番より、近くの二番を選ぶ方が、幸せだったりするもの。
自分のことを好きって言ってくれる人と一緒に居る方が、きっと大切にしてもらえる」


これは策略でもなんでもなく、私の本心だ。

いくら好きでも、常に不安に苛まれるような相手と一緒にいるのは疲れる。

安心できる人と一緒にいる方が幸せ――そんな考え方だってある。

特に彩香の場合は。

駆け引きをするような関係は向いていないだろう。


「でも、それじゃあ酒井くんに失礼だし」

「彩香が割り切れるかどうかの問題じゃない」


それが難しいのだけれど、と心の中で付け加える。

どちらが賢い選択か頭ではわかっていても、割り切れないときがある。

だから、不毛な片想いを続ける女や、ダメな男から抜け出せない女が、この世にはわんさかいるわけだし。
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