彼に殺されたあたしの体
まるで土に向かって話しかけるようにそう聞いた。


すると……。


「僕は大田睦人(オオタ ムツト)だよ」


と、土の上から幼い少年の声が返って来たのだ。


その反応にあたしは一瞬思考帰路が停止する。


なに、今の?


今、あたしの声が聞こえたような反応を大田睦人という少年はした。


土の中に埋められて以来こんな事は今までなかった。


あたしの声に誰かが答えるなんて、そんなのあり得ない。


あたしは死んだのだ。


声帯は存在しない。


そうだ。


睦人君はこの広間で1人遊びを始めたのかもしれない。


誰かがいると空想をして、その空想相手に挨拶をしたのかもしれない。
< 199 / 306 >

この作品をシェア

pagetop