彼に殺されたあたしの体
☆☆☆

それから1時間ほど経った時、ようやく彼は穴を掘り終えてその中から姿を見せた。


随分深く掘り進めたらしく、彼の顔は土やホコリで黒く汚れていた。


しかし彼の仕事はまだ終わりではなかった。


むしろこれからが本番と言ったところ。


穴から這い出てきた彼はすでに疲れ果てている様子で、歩き方がまるで生まれたての小鹿のようだった。


その様子はすごく滑稽で、思わず笑い出しそうになってしまう。


でも、笑う事はできなかった。


あたしはもう死んでいるのだから、筋肉が動くハズもない。


元々体育会系ではない彼は、体力を使うことがひどく苦手らしい。


穴から出てきたはいいが、すぐに次の行動を起こせずにあたしの隣に腰を下ろした。


雨はさっきよりも大粒になり、今ではザァザァと耳障りな音を立て始めている。
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