神風の如く

大きな一歩






「………ん」



障子の隙間から零れる優しい光で目を覚ました



「起きたか………」



まず目に入ったのは土方の少々不機嫌な顔



確か、池田屋で御用改めをした後、怪我をした隊士や捕縛した藩士たちの手当てをしていたはず………



「無理のしすぎだ、丸一日眠ったままだつたぞ」



──そうだったんだ……それはさすがに怒られても文句が言えない…



「す、すみません」



「ったく、何を言い出すかと思えば、長州の奴まで助けやがるしな」



新撰組にとっては敵も同然だ



しかし、近藤は華蓮が必死に助けたのだから、と華蓮の指示通りにお酒やお湯で傷口を消毒して手当てすること許した



「我が儘言ってすみません」



「いや、いい
お前には何か考えがあるんだろ?」



頭の回転が速い土方は華蓮の行動に何か意図があると気づいていた



「はい……あの夜、私に起こったことと、これからのこと全てをお話します」



華蓮は重い腰を持ち上げた














「ここは通すわけにはいかねぇ
手出しは一切無用だ!!」



池田屋事件の夜、土方は遅れてきた会津藩に手柄を横取りされないようにした



「隊服を来てないあんたらが今入ったら、俺たち狼に斬られるぜ?」



この一言で文句を言っていた会津藩は黙って帰って行った



──クソッ、結局池田屋が本命か…



土方は急いで池田屋の中に入る



もちろん近藤や、池田屋に討ち入りした仲間たちも心配だが、何より気になるのは華蓮だ



本命が池田屋だと知って気づく



土方が華蓮に池田屋へ行けと言った時の震えと、自分たちへの細かい指示



華蓮は全て知っていたのだ




それからもう一つ、花見をした日の次の朝、華蓮が呟いていた言葉



──ある力、か…………──



聞かない方がいい気がして聞けなかった




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