偽フィアンセは次期社長!?
「さすがに呼び捨ては無理すぎます!!」


「……んーじゃあ。棒読みもまずいし、さん付けだな。あ、お前名前なんだっけ?」


「……糸島仁美です」


課長の下の名前を自分だって忘れていたくせに、当然のように聞かれると何となくムッとしてしまう乙女心。


「……仁美、ひとちゃん、ひとみん、ひーちゃん、ひとし……」


「課長、絶対ひとしは無いと思います」


……あたし達は小声で何をやっているんだか。


「んじゃ、フツーに仁美、な」


「わかりました」



『仁美ちゃん』


久々に男の人に名前を呼ばれたせいか、忘れかけていた記憶が蘇る。


いつになったら、この呪いは解けるんだろう。


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