偽フィアンセは次期社長!?

「お忙しいんじゃないんですか？」


「あー、うん。とりあえずあっちは落ち着いたかな」


「大丈夫なんですか？現地づ……」


ヤバい。言いかけてやめたけど、それは本人を前に出すワードじゃないような……。


慌ててつぐんだ口なのに、課長は耳がいいらしく、しっかりキャッチした模様。


「あー、なんか部の奴らに聞いた。段々話がエスカレートして、俺がベトナムに３人子供いるって設定が有力になってるから一回説明した方がいいって。
何、お前もそういうの信じる派？」


……おう。まさかの父親説。


課長は他人事のように笑っているけれど、何だかあたしは笑えなくて。


「……ここだけの話な」


課長が声をひそめる。