10回目のキスの仕方
「…じゃあ質問を変える。松下さんは何が欲しい?浅井から。」
「け、圭介くんからですか…。でもこの前もいただきましたし…。」
「え、何貰ったの?」
「眼鏡です!パソコン用の。」
「え、それって浅井チョイス?」
「…私がお願いしました。眼鏡が良いって。」
「っあー!それが俺には使えない!」

 そう言って洋一は頭をさらに抱えてしまった。

「…使ってみたら、どうですか?もしくは一緒に買い物に行くとか。案外、明季ちゃんは深く考えずに付き合ってくれるかもしれません。」
「…松下さん、他人事だと思ってるでしょ?」
「い、いいえっ!ただ、明季ちゃんは…恋愛的な意味で好かれる自分を考えていないから、だから…。」
「俺に誘われても、そういう意味には取らない、か。」
「…かな…って。」
「松下さんも結構残酷~。」
「す、すみませんっ!」
「いやいや。じょーだん。松下さんの考え方が、多分一番明季に近いと思うし。」
「…あの、一つ、お聞きしたいことがあります。」
「うん。」

 いつものような表情に戻った洋一が頷いた。

「…明季ちゃんのどこを好きになりましたか?」
「…っ…松下さんってなかなかに…直球。浅井にもこんな感じなの?イメージと違うんだけど。」
「す、すみません!でも気になったもので…。」
「試されてるな…俺。」
「そんな!試しているつもりは…ないのですが…。」
「…うそうそ。松下さんにそういうつもりがないの、ちゃんとわかってるって。どこが好きって…まぁ色々あるけど、でも一番は、友達想いなところなんだろうなって…思う。始まりはそこだし。」
「始まり、ですか?」

 洋一はテーブルの上に置いていたグラスに手を伸ばし、メロンソーダを一口飲んだ。

「あぁ、こいつのこと好きかもって思ったのは、松下さんを大事にしすぎる明季を見たときかな。」
「え、そ、…そうなんですか?」
「うん。これは結構本気。」

 真っ直ぐな瞳が美海を突き刺す。

「そういう、松下さんに対する真っ直ぐな想いが、別の形で俺に向けばいいのにって…。」

 そう言ったあと、洋一の頬は赤く染まった。
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