レオニスの泪
「ーだから、祈さんはいつまで経っても弱いままなんだよ。」



「!?」



やがて、呟くように、囁くように、神成の声が、闇夜に溶けた。



「なっ…」


カッと頭に血が上ったものの、返す言葉が見つからなくて、思ってる以上にダメージを受けているのだと自覚した。


当の本人は、涼しい顔をして、私を見ている。


少し先の通りを、タクシーが通り過ぎ、ライトの光が辺りを大きく照らし、直ぐに縮んで消えていく。




「君が夜中に泣きたいと言うのなら、僕が付き合ってあげる。」



車の音が遠退いていくのを待って、神成が、さらに提案を持ちかけた。



「な、に、言って…」



私は数歩先にいる童顔男をガン見しつつ、口をパクパクと動かすが、うまく声が出てこない。




「だって、今の言い方だと、祈さん絶対病院いかないでしょ。」


「!」



図星だった。

いつもと変わらない筈の神成の大きな目が、自分を射抜いているように感じる。




「ねぇ、知ってる?」



二の句を継げない私との距離は保ったままで、神成は小首を傾げた。




「自分がどれ程弱いか認めることができたらー初めて、人は強くなれるんだ。」

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