レオニスの泪
―おかしい。
「はっ…はっ…はっ…はっ…」
本当に息が吸えないみたいだ。
呼吸が段々浅くなってきている。
―苦しい。苦しい。
すれ違う人達に気付かれないように、慌てて裏口へと向かって、中庭に走った。
だが、足取りは自分が思っているよりおぼつかない。
―『慧君、朝からずっとだるそうにしてて…昼に測ってみたら38度ありました。一応お母さん迎えに来るまで保健室で寝かせていますから―』
さっきの電話の内容が耳に残っている。
―気付いて、あげられなかった。
掌で口に蓋をして、少なく感じる酸素がこれ以上でていかないようにと願った。
―『僕のこと、どうでもいいの?』
慧の朝の顔が浮かぶ。
昨晩の泣き顔も、浮かぶ。
「はっ…はっ…はっ…はっ…はっ…」
中庭の池の隅の草むらまでくると、とうとうしゃがみ込む形になった。
―『―大丈夫だよ、ママ。』
ぐるぐるぐるぐると、頭の中に、これまでの様々な、見てみぬフリをしてきた、平気なフリをしてきた、だけど、本当は突き刺さっていた言葉や場面が溢れて出てきて巡る。