レオニスの泪












「お疲れ様でしたー…」





「お疲れー」




夕方。





携帯を見る暇もなかった私は、そそくさとロッカーに向かった。





白衣を脱ぎ捨て、着替えつつ、携帯を開く。




「っ―!?」




保育所からの着信が数件。



急に上がりだした心拍数を無視し、慌ててボタンを押すと、耳に当てた。




―苦しい。




「っあっ、もしもしっ!!すいません!!葉山慧の母ですが!何度もお電話いただいたみたいで…えっ!?」





電話の向こうの、先生からの言葉に絶句する。




ぐるぐる、ぐるぐる。



自分がちゃんと地面に足を着いているのだろうかと、急に不安になった。




「…はい…申し訳ありません…今から迎えに行きます…」




何を入れるとか入れてないとか忘れてるかもとかそんなのお構いなしに、鞄を引っ掴んだ。




―息が、吸いにくい…




「あら?葉山さんどうしたの?そんなに慌てて…」




更衣室を出た所で、笹田に捕まる。




「あ、いや…子供が熱出して…」




「えぇ!葉山さんの所も?!やぁねぇ、月曜日来れる!?」




迷惑そうな顔に、普段なら痛まないどこかが、きりりと痛んだ。




「大丈夫だと…思います、、けど…今日病院行ってから、また連絡します…」



「お願いね!」





小さく頷き、俯いて足を速めた。



休憩室に居た金森にも同じ事を伝えると、彼女はじっと私を見つめ。




「葉山さんこそ、顔色悪いけど、大丈夫?」




と訊いてきた。




―苦しい。




「…だいじょ…大丈夫です…ありがとうございます。」




―息が、苦しい。



気のせいだ、と言い聞かせながら頭を下げて、駐輪場へと向かおうとした。




が。




ふらふら、ふらふら、する。


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