レオニスの泪


いつもなら仕事終わりに通る道だ。

日が暮れてからしか通らない道は、昼間に通ると少し背徳感がある。


ー辞めたんだなぁ、仕事。


ぽっかりと、穴の空いたような心を紛らわせるように、自転車の車輪を見つめるも、気付くと、同じ事ばかり考えてしまう。


病気なのか、衝動的になる自分がこわい。

制御できなくなってしまったら、自分はどうしたらいいのだろう。



ーあ。


ふと、横目に入る、中庭。

いつか、神成と出逢った場所。

過呼吸になって、自分の限界を知った所。


これからここに来ることも、あまりなくなるだろうから、少し立ち寄ってみるかと、自転車を脇に停めて、ベンチに座った。



当然だが、緑は既になく、赤や黄色に染まった木々が、気紛れな風に吹かれて、揺れたり落ちたりしている。

その様子を見ながら、心の中が、ぐちゃぐちゃで、整理がつかないくらい散らかっているから、どれにも手がつけられなくて、放心状態になっている。

それが、今の私を正確に表す形容詞だと思う。



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