レオニスの泪
家の前まで来たことを知らせると、彼女はやはり薄着で、階段を心細げに降りてくる。
車内に招き入れると、それだけで、葉山祈は泣きそうな顔をした。
ギリギリの精神状態なのに、彼女は僕に、それでも吐き出そうとしない。
誰かに頼らないで生きてくのが当たり前になっていたとしたら、突然誰かに頼れと言われた所で、その方法を知らないのも頷ける。
他愛のない話をして、少しずつ彼女の緊張を和らげようとした。
が。
気付けば、葉山祈がぎゅっと口を結んでいて、その唇から血が出てしまいそうな程の力で、噛み締めている。
その為、やんわりと注意すると、彼女は、震える声で、ぽつぽつとその日の出来事を話し出した。
僕は、彼女が不安にならないよう、せめてひとつでもその要素を取り除けるようにしたいと思った。
それで、この先の仕事について、生活について案じている彼女に、僕の家に、仕事をしに来てくれないか、と言った。