レオニスの泪


葉山祈に言われたことは、全て図星だった。

朱李はずっと僕の心の中に住み着いていて、それは朱李が自らそうしているんじゃなく、僕がそうしている訳で。

僕が朱李を放すことが出来なくて。

葉山祈を守ることで、僕は朱李を守ったと思い込みたかったのかもしれないと考えていた。

ハウスキーパーとして、家に招き入れたのは、もしかしたら、朱李について知ってもらいたかったのかもしれない、訊いて欲しかったのかもしれないと、はっきりとは分からないけどそう思う。


《今夜は星がきれいです。そちらも星がきれいに見えますか?》

だけど結局、初日に彼女に星についてメールをもらった時、僕はまさに夜空を仰いでいて、その中に朱李の大好きだった星を探そうとする癖が染みついている。そんな自分に罪悪感が募っていき、返信することが出来なかった。

彼女を利用しているような自分と、彼女を助けたいと思っている自分と、どちらが強く、本当なのか。

どんどん、わからなくなってきていた。

レオニスについて、電話で訊ねられた時に。

淀みなく答えたのは、自分がとっくに、見つけられるようになっている事実。


レオニスは、現実的に見えている。

だけど朱李が居ないと見えないと、思い込んで逃げて居た。

そんな自分を、受け容れたからだった。

だから、はっきりと、葉山祈に告げることができた。


今、レオニスは見えるんだ、と。
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