レオニスの泪
「どう考えれば良いの?!やっぱり無理ってどういうこと!?」
マシンガンのように憤りの言葉を発砲していく女。
ーやっぱ無理って何だろう、別れ話っぽいかな。
私は完全に他人事で、面白半分に聞き耳を立てながら、蚊に食われないかということの方に思いが集中していた。
相手の男の声が、聞こえるまでは。
「五月蝿いね。」
「!なっ!!」
「最初から無理っぽかったけど、纏わり付くから仕方なく一緒に帰っただけ。ただの勘違い。逆に迷惑なんだけど。」
冷た過ぎる言葉に、さっきまで喚き散らしていた女が、完全に言葉を失った。
私はといえば、嫌な汗が背中を伝う。
蚊に向けられていた意識は、あっという間に入れ替わってしまっていた。
「話は終わり。もう2度と会うことはないと思うのでさようなら。お気を付けて。」
遠退く足音とは反対に、私の心臓の音はどんどんと大きくなっている。