【完】向こう側の白鳥。
side 白鳥柚子
梅雨が終わった。
六月が過ぎて、今はもう七月。
あと数週間で“夏休み”になる。
「柚子……。」
この約一ヶ月。
私と一ノ宮先輩の関係は、あの日から何も変わっていない。
ただ少し、先輩は甘くなった。
「……柚子の匂いがする。」
そう言って抱き着いてくる先輩は、前よりもスキンシップが増えて甘い。
その度に私はドキドキさせられる。
……もちろん、今も。
「せ、先輩! もう離れて下さい!」
「……いや。」
……なんで「いや」なの!?
七月という夏の今、いくらクーラーの効いた部屋でも抱き着かれると暑い。