【完】向こう側の白鳥。
沢渡先輩は私の腕を引く。
力強い、一ノ宮先輩よりも少し太い腕。
あぁ……今、私の腕を掴んでいるのは、一ノ宮先輩じゃないんだ……。
また、涙が零れ始めた。
――「この辺なら、人気も少ないだろ。」
沢渡先輩に連れて来られたのは近くの神社。
辺りの木々達によって花火が見えないせいか、人は誰もいない。
「何があった。」
「な、なにも……。」
「言えよ!!」
神社の階段に腰を下ろす私の前で、沢渡先輩が声を上げる。
……その顔は真剣で、……そして、切なげ。
ほんの一瞬、一ノ宮先輩に見えてしまった。