【完】向こう側の白鳥。
「……何が?」
「え!?」
急に視界に入り込んで来た一ノ宮先輩に驚いて、私は勢いよく椅子を引いた。
な、なんで……!
「なんで一ノ宮先輩がここに!?」
さっきまで普通だった心臓の鼓動が、先輩の登場によって激しく鳴り始める。
相変わらず綺麗なミルクティーの金髪に、澄んだ灰色の瞳。
その目が少し細められ、私を映した。
「なんでって……美術部だから。」
ハッとする。
そういえば今……、部活中だった……。
そりゃあ先輩部長だし、いるに決まってる。
「す、すみません……。ボーッとしてました……。」