幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


「でも、あの人にまた会えた時、胸を張れる自分でいたいと思う。だから俺は戦う」


「はい……」


「総司も近藤さんも、そんなにヤワじゃねえよ。俺たちはただ彼らを信じて、前を向いていようぜ。
たまに泣きたくなったら、手ぬぐいくらい貸してやるから」


副長はもう一度あたしの頭をなでると、先に歩いていってしまった。


京では鬼と呼ばれた副長が、手ぬぐいを貸してくれて、優しい言葉をかけてくれるなんて。


彼は近藤局長や永倉先生たち、たくさんの仲間を失って、変わってしまったんだろうか。

それとも、子供の頃の総司が出会った、本来の彼に戻っただけなんだろうか。


ううん……副長は鬼になろうとしていただけで、本当はいつだって優しかった。



あたしと副長は一緒?

ううん、ちがう。

土方副長はやっぱり、心の強い人です。


「ありがとうございます……副長」


部屋に戻り、すでに横になっていた副長に、小さな声でお礼を言った。

けれど彼は気づかなかったようで、返事もせずにそのまま眠ってしまった。


あたしたちはただ総司や局長を信じて、前を向いていよう。

そう言ってくれた副長の言葉が、あたしの胸に、小さいけれど新しい光を与えてくれたような気がした。




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