幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「それなら、支度をしなきゃ」
せっかく斉藤先生たちが帰って来るなら、せめておいしいご飯でも作っておいてあげよう。
会津は今大変な状況だから、物資には限りがあるけれど。
「ああ、頼む。お前がもてなしてくれたら、あいつらも……」
言葉の途中で、土方さんの口が急に止まってしまった。
かと思うと、額を押さえてかがみこんでしまう。
「土方さん!めまいですか?」
「……あ、……ああ……」
どうしよう。今は何も刃物を持っていない。
「ちょっと待っていてくださいね!」
なんて失態。いつでも刃物を持っているべきなのに、こんなときに限って。
急いで建物の中に入ろうとするあたしを、土方さんが止める。
「いい……行くな」
「でも」
「いく、な……」
それきり土方さんは黙ってしまった。
どうしよう。
こんな状況で一人きりにするのも心配だけど、血を飲んで楽になるなら……。