幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


「土方さん……!」


ああ……今、きっと近藤局長と同じところに行ってしまったんだ……。


「楓、泣いてる場合じゃないよ!」


平助くんの声で我に返る。


ハッと目を見開くと、総司の体から抜け出た魂が、ふらふらと空中をさまよっているのが見えた。


まるで、土方さんのことを探しているみたい。


斉藤先生は必死で真言を唱え続けている。


魂と体は、あまり長いこと離れていると、どっちも滅びてしまう。


平助くんがもののけに同化するとき、銀月さんがそう言っていた。


このままじゃ、総司も……。


「総司!お願い、生きて!」


どんなに辛くても、悲しくても。


「あたしがそばにいるよ」


近藤先生や土方さんの代わりにはなれないけれど。


「どんな姿になったって、あんたを愛してるから……!」


光に向かって、叫ぶ。


この想いだけは、誰にも負けないから。


土方さんの手と、総司の手を、一緒に強くにぎる。


すると、頼りなく浮かんでいた光が、一層まぶしい光を放った。


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