幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


目の前の弱き者を守る。


そういえば、京の頃は市中の治安維持があたしたちの任務だったっけ。


斉藤先生は、あの頃からまったく変わっていないんだ……。


何度敗北を経験しても、心の中の誠は、揺らいでいない。


そんな斉藤先生がとっても強く見えて、うらやましくなった。


「俺があっているとか、お前が間違っているとか、そういうことではない。
お前はお前の誠を貫け、沖田」


強く、見つめ合う二人。


「ああ。俺は、近藤さんや土方さんと共に見た夢を追い続ける。
新撰組の名を背負って、最後まで戦う。まだ、終わらせるわけにはいかない」


人にはそれぞれの『誠』がある。


たとえ、強い絆で結ばれた仲間と別れることになろうとも、それを曲げることはできない。


総司も斉藤先生も、どちらも間違っていないんだ。


二人は視線を交わすと、ふと笑みをこぼした。


「今までありがとう。お前のような最強の剣士と働けたことを、誇りに思う」


斉藤先生が総司に手を差し出す。


たしかこれは、西洋式の挨拶……だったような。


総司はその手をしっかりと握った。


< 264 / 365 >

この作品をシェア

pagetop