幕末オオカミ 第三部 夢想散華編

思いがけぬ再会



仙台で榎本さんや大鳥さんとの軍議の毎日。


……なのは総司だけで、あたしはすっかり暇を持て余していた。


仙台藩の恭順派と決裂した10日後、とうとう会津藩が降伏。


斉藤先生はどうなったか聞いてみるも、知る人はいなかった。


「あの状態から一か月も、よく戦った」


総司はそれだけ言うと、格子の外に視線をやる。


遠い会津に、思いを馳せているようだった。


そんなとき、不意に襖の向こうから声がかけられた。


「土方さん、島田です」


島田さんは京にいたころからの新撰組隊士で、しかも監察方だった人だ。

体が大きくて、西洋の服もよく似合う。


「どうした」

「珍しいお客様ですよ!松本良順先生です!」

「えっ!」


驚いていると、島田さんの影から松本先生が無理やりに顔を出した。


「おお、楓!生きてくれていたか!」


入っていいって誰も言ってないのに。


松本先生は遠慮せず部屋に踏み込み、あたしをぎゅうっと抱きしめた。


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