幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


あの戦のあと、総司はしばらくして目を覚ました。


まるで狐につままれているようで、しばらくは何が起きたか理解できなかったけれど……とにかく総司は生きている。


槐は、あたしの体液が総司の体の中に入ったことで、奇跡が起こったんじゃないかと言う。


本当のところどうなのかは、誰にもわからない。


でもあたしは、ひそかに思っている。


あのとき、きっと新撰組のみんなの魂が、総司を助けてくれたんじゃないかって。



結局あたしたちは槐の雇い主の好意に甘え、ロシアへと亡命することになった。


これからの日本がどうなるのか、見届けたい気持ちもあったけれど……。


それは、生き残った新撰組の同志が、しっかりやってくれるだろう。


今は新天地への期待と不安で、胸がいっぱいだった。


「いつか桜を、この子にも見せてあげたいな」


そして、語って聞かせてあげたい。


新撰組という、幕末最強の武装集団がいたことを。


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