幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「わかりました。行けばいいんでしょう」
総司は立ちあがり、勝手にその場から立ち去ろうとする。
「待って、総司」
慌てて追いかけるけど、ふすまから出た瞬間には、総司はもう廊下の果ての方に行ってしまっていた。
「あいつぁ、ほんと素直じゃねえな」
副長がため息をつく。
あんたもね、と言いたい気持ちを抑え、部屋の中を向いた。
「楓、総司のことを頼む。こっちは平助もいるし、大丈夫だ。ゆっくり養生して、ついでにガキでもこさえてきやがれ」
「は、はいいい!?」
「何を驚くことがある。お前と同い年の人妻は、みんなとっくにガキがいるぜ」
みんなじゃないもん。子供がいない人だって、遅くに産む人だっているもん。
一般的に、そういう人が多いってだけで……。
「近藤さんが、お前らに期待してたぜ。
あの人は娘しかいねえからよ、近藤の姓と天然理心流をお前らの子が継いでくれないかって」
「え……っ」
あたしと総司の子を、近藤家の跡取りに?
それは、あたしたちのことを自分の子のように思ってくれてるってことだよね。
気が早すぎるような気がしないでもないけど……正直、嬉しい。
「そ、それは、あの……とにかく、大阪に行く準備してきますっ!」
幹部たちのニヤニヤとした視線から逃れるように、あたしは走ってその場から離れた。