幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


──夜が明けると、ついに新政府軍が動き出した。

こちらの陣に向かって、大砲を撃ちかけてきたのだ。


応戦するしかなくなった甲陽鎮撫隊。


身を隠すものが何もない中での野戦が始まった。


土方副長はまだ到着せず、いざ戦となったら農兵たちは見物人と化してしまう。


大砲を使いこなせる者もおらず、寄せ集めの兵はすぐに散り散りになった。


来るはずの会津の援軍は来ない。


やがてそれは、隊士たちの士気を上げるための嘘だったということがわかる。


局長は絶対に勝てると思い込んでいたから、そんな嘘を言ったんだろう。


もののけたちは指揮官である総司が動けないことと、夜になる前に戦の勝敗がほとんど決してしまったことで、出番を失った。


こうして、誰もが心配したとおりに……甲陽鎮撫隊はたった一日の交戦で、壊滅してしまったのである。



< 85 / 365 >

この作品をシェア

pagetop