care~男嫌いな私とアイドルのあいつ~






中に入るとそこは
ほんとに想像どうりで





光のない真っ黒の部屋を不気味に照らす
カラフルなライト。





でも教室の中自体はシンプルで中央に
置かれたテーブルのみ。





そこにはまたもや黒いマントを被った
男の人が座っていた。







あれ…占い師って女の人かと思ってた…





そう思いながらテーブルに近づき、
椅子に腰掛ける。








男の人の顔はマントを深く被ってるせいか
口元しか見えなかった。






「あ、あの」




かなり怪しげな雰囲気に
目をしばたたかせながら口を開いた。








「ようこそ。占いの世界に。」




彼は低いトーンでそう呟くと
どこに隠してたのかタロットカードの
ようなものを私に見せてきた。






「この中で一枚、直感で選んで」





彼の言うとおり、私は見せられた
カードをじっと睨みながら
七枚のうちの一枚を迷わず引いた。




そのカードの絵柄をみる前に
彼に渡す。






彼はじっとそのカードを見て
なにかぶつぶつ呟き始めた。







「今、あなたは幸せかもしれない。
 しかしそのまでの時間の中で
 あなたは何か忘れ物をしている。
 物じゃない。誰かの感情だ。」





その言葉の意味はすぐに理解できた。








きっと…









慶くんのことだ。










「その表情からすると、
 心当たりはあるようですね?」





私がコクリと頷くと彼は
今まで無表情だったのに
ニヤリと笑って私にそのカードを
投げてきた。






その上から降ってきたカードを
私はしっかりと掴んで、
絵柄を確認する。








「Rescue…?」




カードにはガラスの靴が脱げた
あのおとぎ話に出てくるお姫様の
絵が描いてあった。








「あなたの落とし物はそのガラスの靴
 ですよ。でも誰もその靴の持ち主を
 探しに来ないでしょう。なので


 あなた自身が探してあげてください。」







その言葉を聞いて私は
占い師にお礼をいう前に
すぐにそこから抜け出していた。

















「あなたの幸運を願います。」








< 92 / 157 >

この作品をシェア

pagetop