声なし姫〜空に羽ばたく声〜

何かツボにはまったのか、暫く笑っていた遠崎だが、一通り笑ったら気が済んだのか

「えーっと、太陽との事だっけ?小1からの付き合いなんだー!」
「え?彼氏じゃないのか?」

思った事を聞いただけなのになぜか大笑いして

「ナイナイ!だって太陽は・・・って言っちゃダメだった。とにかくつき合ってないよ」

つき合ってない。その言葉に安堵している自分がいた。そのとき、気づいたんだ。遠崎が好きな事。今まで無愛想とか思ってたけど、なぜか、初めてじゃない気がした。あの歌声を聴くのは。
俺は、断られる覚悟で、軽い気持ちでいった。

「なあ、太陽とつき合ってないならさ・・・俺たちつきあおっか」

すると遠崎は一瞬悲しそうに笑って、

「いいよ」

と言った。俺たちは晴れてつき合う事になった。

二人で教室に行くと、太陽は、明希達と前の様にしゃべっていた。俺たちに気づいた太陽は

「おかえり。・・・ほう、なるほどねー。陽菜乃、幸人。お前ら、付き合い始めたな?」
「おう。ってかなんで分ったんだ?」
「なんでって、陽菜乃は小1からのつき合いだし、幸人は・・・。まあ、何となくだ」

そういう太陽は、なぜか親父に見えて、そして、俺と親父を捨てた母親と双子の弟を思い出す。
けど、そんなおもいはすぐに捨てた。ある分けないのだ。あんな簡単に家族を捨てる様な奴じゃない。

けど、俺は気づいてなかったんだ。
太陽が背負い続けた悲しみも、遠崎が背負った辛さも。

そんな事知らずに、俺はお前達を傷つけてたんだな・・・
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