君をうつす瞳
1focus 君と私の距離
 あなたの瞳にうつっているのは
 私じゃない。
 いつか、あなたが私だけを見てくれるそんな日を願ってー。

 

  ゴンッ!!!
『あいたっ!!!』
……………またやってしまった。
5月7日。火曜日。三時間目。
机から転げ落ちた消しゴムを拾おうと机の下にもぐる私は、いつも机に頭をぶつけてしまう。
別にねらっているわけじゃない。
みんなはそれを見て笑っているけれど、笑いだってとりたいわけじゃない。
どうして私は、こんなにもぬけているのだろうー?
いやいや、ぬけてるわけじゃないよ!だって、頭をぶつけちゃうのは仕方ないよね!
うーん、でも、やっぱり毎回ぶつけてたらねらってるって思われちゃう…?
でも痛いんだよ!こんなの、ぶつけたくてやる人なんて…
『今日の授業はここまでだー。』
自問自答しているうちに、三時間目が終わってしまった。
あぁ、なんか、私ってなんでこうなんだろう。 

『大丈夫か?佐野。』
『毎回打ってるよなおまえ。』
『バカなのか?』
授業が終わったとたん、一斉に寄ってくる男子三人。
心配してくれるのは、ありがたいことだと思ってる。
でも、毎回毎回寄ってくる男子に少し困っていた。
『心配してくれてありがとね。大丈夫だよ。いつものことだしね!』
私は、出来るだけ困っているのを表情に出さないように笑いながら答えた。

その時ひなたの頭には一言の言葉しか思い浮かばない。
…………………恥ずかしい!
ただそれだけだった。

私の好きな人。川口聖。
今年は聖くんと同じクラスになった。
嬉しいことだけど、こんな恥ずかしいことをしてしまう度、聖くんに笑われてしまう。
運が良いのか悪いのか分からない。
毎日笑われないようにする!
なんて、目標を立てたのは今年の春のことだー。
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