暴走族に愛された不登校女子。







「杏ちゃんが好きなんだ」




そう言うと、涙を一筋流していた。


あたしは何も言えなくなって、その場に立ち尽くした。





直樹は肩で息をして、落ち着きがなかった。






「……お前が今まで嘘をつくのは、人のためだと思ってた…」





悔しそうに言う声が酷く悲しく聞こえた。


あたしはただ直樹の言葉を聞くしかない。





静かな空気が、何度も訪れた。







「でも…お前も、自分の意思言えるじゃねぇか」




「直樹…」






智さんが少しだけ、いつもの瞳に戻っていった。



「なら、智。てめぇに勝負だ。




杏はぜってぇ、渡す気はさらさらにねぇ。


だけどこのままじゃ、俺もお前も。

何にも前には進めないから」


< 214 / 304 >

この作品をシェア

pagetop