ふたりぼっちのクリスマス

ふたりぼっちのクリスマス

「今年行けるといいね」

直樹は私に笑いかけてくれる。

だけど、私は直樹を見ずに窓から見える夕暮れに染まった雪を見つめていた。

「真冬の海はきっと綺麗だ」

彼は一生懸命話してくれるけれど、私の耳はその言葉を心に届けてはくれないの。

「きっと寒いから、きちんと防寒しなきゃね。あ、でも、その前にお医者さんのオッケーがないとダメか。きっともらえるね」

苦笑いで、頬をかく直樹。

それは、直樹が嘘をついた時の癖。

分かっているわ。私の病気は良くならないの。

「……雪……」

私が小さく呟くと、直樹は驚いた顔をして私を見た。

それが少しだけおかしくて。

自然と口角が上がって、笑った。

「……雪、降ってるといいね」

私の言葉に直樹はうんと頷いた。

その顔は、とてつもなく、嬉しそうで。けれど、とてつもなく、悲しそうで。

きっと、私はながくないのだと悟った。