ふたりぼっちのクリスマス
『真冬の海を見てみたい』

私が直樹にそう言ってから何年が経っただろう。

『それなら、クリスマスに見に行こう』

直樹が嬉しそうに満面の笑みを浮かべてから何年が経っただろう。

私の病状は良くなることはなく、むしろ悪化していくばかり。

毎年、私と直樹は手を握り合って、ふたりぼっちのクリスマスを過ごすの。

ケーキも、素敵なプレゼントもないけれど、あなたの体温が私の手から全身に広がるのを感じるの。

真冬の海も見てみたいけれど、そんなクリスマスの過ごし方も好きだ、なんて思うのは、私が直樹にベタ惚れだから?

「面会の時間、終わりましたよ」

個室のドアを開けて、看護師さんが終わりを告げる。

私はこの瞬間が嫌い。

「はい。今、帰りますね」

直樹が、愛想笑いで私の手を離してしまうから。

今までは直樹の体温でいっぱいだったのに、今は冷気が私の手を撫でてる。

「また、明日」

私に笑いかけて、病室を出ようと立ち上がった直樹の服の袖を思わず掴んでしまった。

「明日、また来るから。約束」

そんな私に彼は困ったように笑って、頭をくしゃくしゃと撫でた。

その大きくて温かな手に安心して、服の袖を離した。


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