僕は悪にでもなる
二人は強く決意し、新たなスタートのいちについた。

「よーい」

引き金を引き、紙火薬が鳴る前に見知らぬ男が近づいてきた。

「はじめまして○○の部下である○○の本橋と申し上げます。」

そういって名刺を渡してきた。

「はじめまして。○○の○○と申します」

「○○が残したものを○○から預かってきました。」

そう言ってスーツケースを渡してきた。

「ありがとうございます。彼は?」
「○○は手が離せないそうです。電話をかけてもでないので桜公園に代わりにもっていってくれと。私も時間がないのでこれで失礼します。」

桜はそのケースを受け取った。

「弁護士が残したもの?」
「えー。大井からずっともらっていた現金よ。自殺する前に遺書に残してたの。
あなたに返すって」

「返すって。俺のじゃない。大井の金を俺が受け取る義理もない」

桜は受け取ったスーツケースにどうやら違和感を感じているようで
険しい表情にかわった。
ジーとジーと見ている。
そして名刺を確認している。

「ちょっと待って!警察手帳を見せて!」

そう桜が言ったが○○はもういなかった。

そしてゆっくりとゆっくりと表面を手で撫でるようにさわっている。
ふと、小さな振動に気がついた。
次第に振動が速く大きくなっていく。
「お母さんそれ何?私にも見せて」
そう○○が言ったが桜の表情は険しく深刻な顔をしている。

そして桜はスーツケースに耳を当てた。
「ピ。ピ。ピ。」
桜はすぐさま立ち上がり僕達から離れるように走って行った!

「桜!」

僕は叫んだ!

「お母さーん!どこいくの?私にも見せて?」
そう言って桜の元に○○が走って行った。

娘の声に気づき桜は振り返った。

「とまりなさーい!」
大きな声で叫んだ!

でも時遅く○○は桜のそばに。

「みんな離れてーー!」

桜はそう叫んで、スーツケースを力一杯にできるだけできるだけ遠くに投げた。
その瞬間。

「ドカーーーーーーン」

耳が裂けるような爆音
爆音の方へ背を向け俺はとっさに空美をだきしめた。

そのままとてもない力のある爆風に飛ばされた。
舞い上がった砂と煙。
それをのみこむように炎が広がり僕らを飲んだ。

まだ咲かぬ、木々達も燃えあがり灰になった。

僕の始まり。
桜の始まり。
桜からもらった種を、土にうめ水をやり花をさかせようと。
その咲かせた花に誰かが勇気をもらい。水をやる。
咲いた花から種が生まれ、誰かに受け渡しまた花に育てる。

強い決意、抱いた未来への希望。
その小さな小さな種から今。始まるところだった。

ずっとずっと救ってくれた幻想的な桜
もう少しで空美に見せてあげられる期待。
雪美、虹美、かずみさんの遺骨。
種も、桜も、期待も、遺骨も、二人の決意も、小さな命も
何もかもが、一瞬の内に跡形もなく燃え尽き。悪に飲まれた。

離したと思えば掴む悪。
掴んだと思えば離れていく愛。
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