掠れた声で囁いて



 そして、そこにいるものに目を見張った。


「うー?」

「かっ……」


 かわいいいいっ!



 なぜ今まで気付かなかったのだろう。


 大きく開かれた丸くて愛らしい黒目がちの瞳。
 思わず頬ずりしたくなるほど真っ白ですべすべぶにぶにのほっぺ。
 軽く開いたぽってりした赤い唇。


 すごく、すごく可愛い赤ちゃん。見た感じ三ヶ月ぐらい。

 そんな子に楽しげに笑われた日には、身体中の骨が溶けるかのようなあり得ない感覚に支配される。


「なんて……名前なんですか?」


 赤ちゃんから目を離して訊ねると、驚いた顔と目があった。


「えと、あまりにも可愛いから、呼んでみたくなっちゃって……すみません」


 あまりにも驚いてるもんだから、言い訳がましくつけたすと、男はああと納得した顔を見せた。


「この子は、啓っていうんだ」

「けいちゃん?」

「いや、啓くん」

「男の子なんだ!」


 おそるおそるけーくんと呼びかけてみる。
 けーくんが私の声を聞いてか、ニコッと微笑む。
 それがエンジェルスマイルだということは分かっているのだけれど、この子の魅力に抗えるはずもなく、だらしなく頬も目尻も垂らしてでれでれしてしまう。


「可愛いなぁ……!」


 呟きながら撫でても……?と訊ねると大丈夫だよと返ってきた。


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