唯一の純愛
オフ会以来、私達は頻繁に連絡を取り合うようになっていた。

そんなある日、私が何気なく言った一言で、二人の関係が進展することになる。

腹減った。
たったそれだけのメール。
そのメールに彼女はこう答えた。
食べに来るか。

お互い何気ない言葉だった。
私自身、普段なら冗談めかして軽く断る。

妻にしても、まさか来るとは思ってはいなかっただろう。

だがその日は、何故か私は彼女の家へと足を運んだ。
あわよくば、という下心がなかったと言えば嘘になる。
しかし、彼女に子供がいることは知っていた。
子供の前でそのような行為に至るほど馬鹿ではない。

純粋に、友人として訪問した。

その時、彼女が出してくれた料理は、お世辞にも美味しいとは言えなかった。
それでも、私のために一生懸命に作ってくれた事が嬉しく、久方振りに家庭の温かさを感じる事ができた。

食事を終え、色々な話をした。

いつの間にか子供も寝入り、夜遅くまで、時間を忘れて話し込んだ。

彼女は、私の話を楽しそうに聞いてくれた。

他愛のない話であったが、彼女の顔から笑顔が絶える事はなかった。

そんな彼女が堪らなく愛しく感じ、その夜私は、彼女を抱いた。

恋と呼べるほどの気持ちではなかった。
その場の勢い。
その程度だった。

だが、不思議な程、私は満たされていた。

私の腕の中の彼女を、とても愛おしく感じていた。
< 26 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop