唯一の純愛
例えば、電車を利用しようと思った際、車椅子の方であれば、何も言わずとも、駅員の方が手を貸して下さるでしょう。
しかし、妻には手を貸してくれません。

もちろん、助けを求めれば手を貸して下さいます。

だったらいいじゃないかと思う方もいるでしょう。
しかし、何も言わずとも助けてくれるのと、言わなければ助けてもらえないというのは、とてつもなく大きな差です。

こんな事もありました。
階段を降りれない妻が、スロープを使って降りていると、スロープの中程に、道を塞ぐように一人の女性が立っていました。

その女性は、一度妻を見て、見た上で知らん顔をして携帯電話を弄っていました。
そのままでは通れないので
すみません、通してもらっていいですか
と、妻が言うと、女性は露骨に不満そうな溜め息をつきながら道を空けてくれました。

電車の乗り降りでもたつく妻に、舌打ちをした学生もいました。

そんな人はごく少数でしたが、少数とは言え、実際にあった出来事です。

悲しい事ですが、これがこの国における軽障害者への認識だと思います。
< 5 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop