唯一の純愛
私が妻と出逢った時には、妻は既に障害を抱えていました。
私はその時に初めて、歩行器という物を見ました。
恐らく、大多数の方が歩行器という物を想像出来ないのではないでしょうか。
私自身、妻と出逢ってなければ、今でも想像出来なかったでしょう。

ましてや、それを使わざるを得ない人間の気持ちなど、想像出来ようはずもありません。

五年間連れ添った私ですら、理解が足りてなかったと思います。

妻は歩道を嫌っていました。
出入り口の僅かな傾斜、視覚障害者の方のための凹凸のあるタイル、普通は気にも留めないような小石。
健常者である私達には解らない、様々な恐怖があったのだと思います。
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