うそつき執事の優しいキス
 たじろいて、二、三歩後ろに下がったら、ごん、と堅いものが頭に当たる。


 うぁ、わたし壁際にいたんだ!


 驚いた!


 全く気がつかなかったと、どきどきしてたら今度は宗樹の手が、わたしの顔のすぐ近くについた。


 こ、これっていわゆる『壁ドン』の体勢とかって言うモノじゃっ!


「まだ、何も話してねぇのに、途中で逃げんな、お嬢さん」


「は……はいぃぃ」


 かくかくとうなづくわたしに鋭く視線を投げて、宗樹は口を開いた。


「……お嬢さんには、言いたいことも山ほどあるが、まず聞く。
 あんたは、一体ここでナニをしてたんだ」


「な……ナニって、ただ学校に行こうと……」


「こんなに朝早く?
 まだ、新入生を迎える生徒会役員だって登校するには早い時間だぜ?」


「でも、わたし電車乗るの初めてで、その……切符買うにも自信なく……」


 最後の方は、消えかけてしまったわたしの声に、宗樹は「ああ~~」と唸った。


「だから、あんた。人ごみに流されてたのか。
 ……でも、切符って、ナニやってるんだよ。
 事前に、スィカとかカード買っておかなかったのか?
 それさえあれば、わざわざ切符買わなくても、自動改札通れるだろ?」


 そか。


 そういうカードを使っているから、みんな自動販売機に並ばずに、改札の方に流れる感じになってるのか。


< 25 / 272 >

この作品をシェア

pagetop