よくばりな恋


健太郎の頭を一発はたいて、着替えに行く。

なんでオレのとこに来ないんだ。翠にも藤原とかいうヤツにもムカついた。

車に乗り翠の家の近くまで行くと、空の後ろ姿を見つけた。背中に何か背負っている?

軽くクラクションを鳴らし、空の側に車を止める。

「あー、ちょうどええとこに。翠がそこのコンビニで行き倒れてて家に連れて帰るとこやねん」

車から降りて、空の背中に目をやると、空のジャケットにすっぽり包まれた翠。熱のせいで顔も赤いし、息も早いけれどよく眠っている。

「オレが引き取る」
空の背中から翠をそっと剥がし、助手席のドアをあけて翠を乗せた。

「え?海斗んちに行くの?ウチの方がええんちゃう?」

空の言葉をまるっきり無視して置き去りにし、翠をオレの家に連れてきた。
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