よくばりな恋
幸いなことに手の傷は出血のわりに浅く、殴られた頬は口の中を切っただけのようだ。
意識が戻ったと連絡があって翠の病室に行く。
顔色は悪いがとりあえずは大丈夫そうに見える。力なく笑顔を作ろうとする翠が痛々しくて、すぐに病室を出てしまった。
「斯波先生、廣田さんの付き添いの方がお話いいですかって」
医局で仕事をしていたら看護師に呼ばれた。
「なんや、紗英か」
コイツもショックを受けているせいか元気がない。
「翠を助けてよ」
「・・・・・・・・・・なに?」
「一人で頑張ろうとしてる。何もかも一人で耐えて乗り越えようとしてる」
「紗英?」
珍しく紗英が泣いている。
「アンタたち、何かあるよね?翠はおじさまに遠慮して必死で気持ちを抑えこもうとしてる」