よくばりな恋


診察室に入ったところで、倒れそうになった。



受付の女の子の笑顔の意味がわかったから。



「廣田さん、大丈夫?」
心配そうに藤原先生がのぞきこむ。

「熱、38.8度もあるの?」

「・・・・・・・・・・はい。昔から扁桃腺が弱くて・・・・・・・・・・」

「とりあえず胸の音聞かせて」

ノロノロとブラウスのボタンを開ける。
藤原先生がちょっと目を逸らしたのは気のせいかな・・・・・・・・・・。

「あらあ〜廣田さん、羨ましいくらい色白ねえ」
横にいる中年の看護師さんが声をあげる。

「はは・・・・・・・・・・それだけが取り柄です・・・・・」

藤原先生の少し冷たい聴診器が胸にあたる。

「ホント白いね。毛細血管が透けて見えてキカイダーみたい」

< 79 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop