キミが教えてくれたこと
電車を乗り継ぎ目的地へと向かう
その間、茉莉花もハルトも特に言葉を発することはなかった
茉莉花の横顔は少し緊張した面持ちだった
目的の駅に降りるとすこし歩き、霊園に辿り着いた
茉莉花はバケツに水を汲み、林草太・林陽子と連名で記されている墓前まで行くと持っていた花を手向けた
『ずっと…来れなくてごめんね。なかなか勇気が出なくて…』
話から推測すると、茉莉花は父が亡くなってからここに来ることが出来なかったらしい
17歳という年齢の彼女には突然の父の死は受け入れがたいものだった
茉莉花は父の墓の前にしゃがみ込む
『私ね、お父さんがいなくなってなにもかも嫌になって何で生きてるんだろうってずっと思ってた』
ハルトは後ろから茉莉花の話を聞いている
『帰って来ても誰もいなくて、ずっとひとりぼっちで。いつも部屋の隅で泣いてたんだよ』
茉莉花は思い出して涙を流す
『でもね、ハルトが現れて私の世界は変わった。誰かといることの温かさを知った。生きる希望を与えてくれた』
茉莉花は溢れる涙を手の甲で抑える
『友達もいっぱいできて…っ、クラスに馴染めるようになったっ…。みんなが優しくしてくれて、"明日"が楽しみになったの…っ』
少し嗚咽をもらしながら父に伝える
『だからねっ、だから…っもう大丈夫だよ!お父さんとお母さんに会えないのは寂しいけど、私、精一杯頑張るから!だから、安心してね!』
その時、サッと優しい風が吹いた
まるで両親が返事をしてくれたかのように。
ハルトは茉莉花の隣にしゃがみ、墓前に手を合わせた
そんなハルトを見て茉莉花は膝におでこを置き、ひとしきり涙を流した
供えたグラジオラスの花がふんわりと花びらを揺らしていた