キミが教えてくれたこと


「さー、明日からみんなお待ちかねの夏休みだぞー」


「「イェーイ!!」」
「「やったー!!」」

放課後のHRの担任の一言でみんなが盛り上がりをみせる

「宿題もいっぱい出てるからなー」


「「ええええー!」」
「「ブーーっ!」」


生徒たちはそれぞれ夏休みの計画や提出物に様々な顔色をしていた



「茉莉花ちゃん!みんなでプールに行く日が決まったからこれ渡しておくね!」


百合に手渡されたのはクラスメイトが作った手書きのしおりだった


『すごい、本格的だね…』

パラパラと中身を見ると集合時間やお昼ご飯、帰宅時間まで可愛い絵で書かれていた


「楽しみだね!今年はいっぱい遊ぼうね!」

「遊ぶのもいいけど、しっかり勉強するんだぞー」


百合の言葉を聞いた担任がそう言うと、はーい!と元気に返事をした


茉莉花は家に帰って父の一周忌の準備をする


その後ろ姿を見てハルトは切なそうな顔をしていた


「明日、なんだな」

『うん、去年の夏休みに入ってすぐ父が倒れちゃったから…』


少し見えた茉莉花の横顔は寂しそうだった


『明日、父の前でたくさん報告することがあるの。友達が出来たことや、毎日が楽しいこととか…』


きっと、心配してると思うしねと茉莉花は無理に笑う


『ハルトは…』

「?」

『どこにも…いかないでね…』


茉莉花の言葉にハルトは困ったように笑うとああ…、と短い返事をしベランダに向かってしまった


『ハルト…』


ーー本当だよ。ハルトさえいてくれれば、私は…



茉莉花はそんなハルトを見て何も言えずそのまま準備にとりかかっていた



朝、パスタを茜に預けて花屋により父の墓前に添える花を選んでいた


『あ、これ…』

茉莉花の目に止まったのは体育祭で百合が作ってくれたリストブーケの花だった

「グラジオラス、綺麗ですよね」

そこに店員が声をかける


『あ、はい。でも、墓前に添えようと思っていて…』

「グラジオラスもお供えするお花として適していますよ。花言葉に"思い出"と入っているので、選ばれる方もいらっしゃいます」


そう言われて茉莉花は色とりどりのグラジオラスの花を選んだ


「ゆりりんが選んでくれた花がこんなとこでも活躍するなんてなー」


ハルトが花束を見て言う


偶然、いや必然としてあるならこれを摘まないことはないと心が動き持っていた花束をそっと胸に寄せる


ーーお父さん、私に起きることは全て何か意味があることなのかな?


父の墓に向かうまでの間、茉莉花は透き通る空を見てそんな風に思った




< 72 / 87 >

この作品をシェア

pagetop