キミが教えてくれたこと
あれからどうやって家に帰ったかわからない
どれくらいの日数が経ったかわからない
茉莉花は抜け殻のように家に閉じこもっていた
チリンチリン…
部屋の隅にいるとパスタがすり寄ってくる
『…パスタ、ごめんね。大丈夫だから…』
パスタを抱き上げ胸に抱き寄せる
また涙が溢れてきた
何度泣いても、溢れては零れ落ち留まることを知らない
その時携帯が鳴る
夏休みに入ってから百合や譲二、クラスメイトから頻繁に心配のメールが来ていたが一度も返すことが出来なかった
長い着信に携帯を見ると百合からだった
茉莉花はそのまま百合の着信に応答する
《茉莉花ちゃん!?やっと繋がった!ずっと連絡こないから心配してたんだよ!何かあったの!?》
『ごめん、ずっと返せなくて…』
《…茉莉花ちゃん、何かあった?》
茉莉花の様子がおかしいことに百合は落ち着いて言葉を発した
『なんでもな、』
《なんでもなくないよ!!》
百合の大きな声に肩を竦める
《ごめんね、あのね、今から会えないかな?》
茉莉花はわかった、と告げると着替えて外に出る
久しぶりの外は夕方にも関わらず蒸し暑かった
茉莉花は近くの公園のベンチで百合が来るのを待っていた
いつの間にか8月後半になりもうすぐ学校が始まる
みんなとプールに行けなかったな、とぼんやり考えていると茉莉花ちゃん!と名前を呼ばれた
「…茉莉花、久しぶり…少し痩せた?」
百合の横には譲二が立っていて、途中で買って来たのか冷たいジュースを手渡された
『…ありがとう』
両手でカップを持つとそこからひんやりと冷たさを感じそれだけで身体の熱を下げた
「茉莉花ちゃん…なにかあったの?」
『………』
百合は茉莉花の隣に座ったが、何も答えない彼女に眉を寄せた
「茉莉花、言いたくなければそれでもいいよ」
譲二は茉莉花の前にしゃがみ込む
「でも、覚えてて。僕達はどんなことがあっても茉莉花の味方だよ」
譲二は茉莉花を見て微笑む
「私達も、茉莉花ちゃんの支えになりたい」
隣の百合も笑顔でこちらを見ていることに気付いた
ーーああ、ハルトはこんなに素敵な人達と出会わせてくれたんだ…
茉莉花の目から一筋の涙が頬を伝う
『夢を…見てたの』
「夢?」
百合は鞄からハンカチを取り出し茉莉花に手渡す
『とても…とても幸せな夢。だけどっ…もう、夢から覚めちゃったの…っ。もう会えないのっ…!っっ…』
茉莉花はそれ以上何も言えずただ涙を流すだけだった
そんな茉莉花を見て二人は何も言わず茉莉花が落ち着くまでただ側に寄り添っていた
ーーきっとハルトが最後に言った願いは、これから何があっても笑顔でいてほしいってことだったのかな…
ーーあなたはとても優しい人だから、自分がいなくなった後のことも考えてくれてたんだろうな
茉莉花は頭の隅でそんな事を考えていた