コワレモノ―人類最後の革命―

転がるようにトランクから降りる(落ちる)と、今瀬が私を見降ろしていた。辺りを見回す。広大な草原の中に、車と私と今瀬。だがよく目を凝らしてみると、遠くの方に大邸宅が見える。

「先ほど、何をされていたのですか？」
「…復讐よ」
「ほう、復讐？　一体どのような？」
「姫乃の指示で動いたクラスメートに、私は道路に突き落とされたの。そのせいで私は四肢を失い、モデルとしての夢も砕かれた」
「それで？」
「人間は同じ生物として産まれた以上平等だから、姫乃にも同じ目に遭ってもらおうとしたの」
「なるほど…」

今瀬は少し考えたような表情をしてから、こう答えた。

「あなたは全く、世の中の仕組みを分かっていらっしゃいませんね」
「どういう意味…？」
「世の中は、端的に言葉を選ばず言ってしまえば先天的に上の者が先天的に下の者を救済して成り立っているのです。ですから上の者は下の者を意のままに統治することができ、下の者は上の者なしでは生きていけないのです。世の中とはそういうものです。姫乃様に比べれば下の者であるということを、ちゃんと分かっていただきたい」
「それ、間違ってると思わない？」

私は立ち上がった。

「人間には、本人にはどうにもできないことっていうのがあるでしょ？　親がお金を持ってるとか、顔が整ってるとか。それで人間の価値を決めるなんて間違ってる。だって、その人間個人のものじゃないから」
「ほう…」
「だから…後に産まれるっていうどうにもならない理由でたまたま下になっただけの私が、あなたに拘束される義務もない」

それだけ言うと、私は全速力で駆けだした。

「待ちなさい！」

今瀬も後を追ってくる。遠くの大邸宅の方に、一直線に駆け抜ける。姫乃はあの中にいるはずだ。

必ず、決着をつける。