アロマティック
「だいたい、スカートのくだりだって永遠らしくない。いつもならもっと上手く流すことできるだろ」

 永遠の行いに、納得がいかないらしい聖は、不満顔。

「そこは俺も自分で失敗したって感じた。相手がみのりだと、調子狂うみたい」

 不思議だよな、と永遠は首を傾げる。

「失敗って、あれじゃ中学、高校生あたりのガキだよ。それに身内でもない、恋愛対象でもない女性に、我が物顔で膝枕させるってどうなのよ? みのりちゃんに気まずい思いをさせてるかもしれないんだぜ」

 永遠は自分の広げた手のひらを、じっと見つめた。

「なんか触れていたいんだよ。みのりの温かさ感じたいっつうか。例えば、犬とか猫って触れていると、落ち着かね? 癒されるっていうかさ。それと似たような感覚なんだよな」

「犬って」

 4人、苦笑い。

「過去の女性とはすぐ関係持ったこともあったけど、みのりは、他の女性とは違うんだよ。まだそう考えるのは早い気がするんだよな……」

 言葉を選びながら話す永遠に、他の4人は顔を見合わせる。

 永遠、気づいているのか?
 今の発言のなかに、無視できない言葉が隠されていることに。
 いった当の本人は全く気づかない様子で、悪ノリしたことへの後悔に、深くため息をついている。

 ここは協力しますか。
 4人は視線を交わし合い、頷いた。

 過去に触れられたくない経験を持つ女子と、愛玩動物に似た感覚だと明言し、惹かれ始めていることに気づいていない鈍感男子。

さて、ふたりに待ち受ける未来は?
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