アロマティック
 気持ちに余裕がなくなっているみのりは、頭に浮かんだ言葉をそのまま言い残し、外へ出ていった。

「マジで怒っちゃったか」

 しまった、とその場に座り込んだ永遠は、顔をしかめ乱雑に頭をかいた。
 みのりが出ていき、ふたりのやり取りを入り口付近で見守っていた面々が、テーブルを囲むように座りだす。

「……で?」

 皆が黙り込むなか、天音が促した。その視線は永遠に注がれている。永遠がなにをいうのか? 他の3人の視線も集まった。
 永遠の脳裏に、感情を抑え込んで、固くなった表情のみのりが思い出される。

「……悪ふざけがすぎたかな」

 永遠は、自分に集まる4人の視線が痛かった。避けるように僅かに顔を背ける。

「みのりといるとさ、楽しいんだわ。だから調子に乗りすぎるというか」

「まぁ調子にのってるね」

「確かに調子に乗ってますよ」

「……だな」

「うん」

「なんなんだよ、追い込むような発言ばっかりか! 誰もフォローしてくらないわけね」

「みのりちゃんのこと好きなの?」

 天音の問いかけに、永遠は「うっ」と声を詰まらせた。

「いや、それは……俺自身まだよくわかってないっつうか」

 天音の心の奥まで探るような視線に、つかの間考え込む。

「甘え?」

「甘えかー……甘えなのかな」
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