アロマティック
「そ、そんなことないっす……」

 唾を飛ばす勢いで迫るみのりに気圧され、たじたじの朝陽が姿勢をただし、視線を反らせた。居心地が悪そうに身を縮める。
 下手に手助けをしてとばっちりをくらいたくない他のメンバーは、固唾を飲んで成り行きを見守った。

「確かにわたしは新参者だよ。付き合いだって浅いのもわかってる。でもそれはお互い様でしょ。ときには妥協だって必要だと思う。自分が辛いからって私生活持ち出して、どうでもいい存在のわたしに当たることないじゃない?」

「どうでもいいは、ない。それに当たってるつもりもない……」

「少しは永遠くんを見習った方がいいよ」

「なにを?」

 なんでここで永遠? 疑問に感じた朝陽が顔をあげる。

「失恋したばかりでも。あんなに前向きに生きてるじゃない!」

 永遠のポジティブな部分は感心に値する。しかし、彼女の予想に反して、他のメンバーは動きを止め、微妙な表情を浮かべている。

「失恋? 永遠が?」

 そんな話し、最近聞いた? 朝陽が、空、天音、聖に問いかけると、皆はNOと首を振る。

「えっ? だって、失恋したって、永遠くんいってたよ?」

「や。ここ最近は恋愛ご無沙汰なはずじゃね?」

「うそ。永遠くんの話しでは、大切なひとがいたって。こいつがいるから頑張れる、とか、元気の源だって」
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